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「液体シリコンでゴム型をとる時はどんな感じなんだろう?」
「液体シリコンの脱泡をどうやったら良いかな?」
といった方に向けてお伝えしていきます。
本記事の内容
●液ゴムを用意
●アルミの枠を買っても良いですが、ホームセンターで揃います
●脱泡の詳細
それでは順を追って説明していきます。
出力品を下処理
1.サフがけ等
●サポートの除去表面の断層をとり、サーフェイサーを吹いていきます。
http://cgworld.jp/feature/201602-eldoramodel-pt1-2.html
▲CGWORLDさんの記事で、除去についての素晴らしい記事もあわせてご参照ください。
▲こちらのサーフェイサーをずっと使ってますが、うまくいっています。
こちらは目の細かさが#1200~1500くらい、似たようなNo.42のスーパーサーフェイサーは#800くらいです。
2本くらい買っておき、常に回転させて使ってます。
っていうのは、使っていって少なくなるとダマになりやすいので、
・古いのは最初用
・新しめは仕上げ用
として使っています。
冬場は温水に漬けて温めてから使うとダマになりにくいです。
ちなみに僕もよくDMMさんにお願いしています。
・アクリル出力の場合
サポート材がついていた後のザラザラした面、特に入り組んだところは液ゴムがくっつくことがあります。
CGWORLDさんの記事の様にレジンウォッシュをするのがベストですが、削る工程→サーフェイサーだけでも結構いけます。
削る→サーフェイサーの工程を2回で、次の工程に行っちゃってもオーケーです。
しっかり乾いたら次の工程です。
2.石鹸水、最強説
石鹸水を原形にコーティングするイメージで付け、乾かします。
これは焼きゴムの時にも有効で、
とにかく石鹸水をつけておけばうまくいく!って感じです。
シリコンスプレーよりも扱いが楽な感じがします。
手に水を付けて普通の石鹸の上で、ひょいひょいと溶いて塗っても良いですし、
泡ハンドソープも便利です▼
一回の分量はかなり少ないです。
塗った後は、原形が熱くならない様にドライヤーを遠めにして乾かします。
入り組んだところがある場合は、
エアーを吹いて奥まで入り込ませる→乾かすを繰り返してみてください。
液ゴム
▲液体のシリコンゴムはお好みで良いのですが、こちらの液ゴムが硬めでちょうど良いです。
硬い方が型の寿命が延びるため。
大:小が10:1の割合で混ぜていきます。
100gいれたら10gいれる感じです。
参考までにですが10:0.5みたいな感じでも固まりました。
小の方がサラっとしてて使いすぎちゃうんですよね。汗
けど、場合によっては不具合も出ると思うので、ご利用は計画的に。です。
■詳細:
ワックスや光造形など熱と圧力に弱い材質のゴム型製作に最適な液体シリコンゴム。
別売りの液体シリコン用フレームを使用しゴム型製作をします。
高強度、高引き裂き、高伸長半透明のゴムの特性を有する付加タイプの製品です。
半透明で原型を観察しながらゴム切りが出来ます。
硬化前は粘土が高いため、原型注型する前に真空脱泡機で脱泡作業を行って下さい。
70℃:1時間
常温:24時間硬化
内容:A剤1kg/B剤100g。
※A剤10:B剤1の割合でご使用下さい。
液体シリコンゴムで綺麗なゴム型を作成する場合は、脱泡をする必要があります。引用:https://item.rakuten.co.jp/seaforce/781031/
枠などについて
デシケーター(脱泡器)の深さによって変わります。
下記の寸法は参考として、デシケーターが浅い場合には縦の長さを短くしてみてください。
アルミ枠
上記のアルミ枠の寸法は、液ゴムが高いなーって発想からちょっとケチケチ寸法です。
余裕のある方は、幅を1cmくらいプラスした方がワックス取りの時に有利かも。
けど実際として使えるには使える寸法です。
アルミのフラットバーの3×20×1000をホームセンターで買ってきて、万力にかまして曲げました。
結構硬いので気合で曲げます。
ただこの枠の精度が非常に重要で、直角に曲げないと隙間が出来ます。
地金の特性により、曲げたところでアクリルと接地する部分が盛り上がります。
定盤の上にひいたペーパーでしっかり平らに削らないと、脱泡時に気泡が次から次へと入ってきて厄介なので注意です。
ペーパーの細かい目でも毛細管現象のように脱泡時、空気を枠に引っ張ってきちゃいます。泣
なので、極力防止する為に枠の長い方向、縦の向きにペーパーをかけて仕上げたほうが良いと思います。
試していないのですが、精度を出せば一緒だと思います。
アクリル
アクリサンデーのアクリル板で、厚さは5mm。
アクリルカッターというもので傷をつけて割り、希望の寸法にするイメージです。
出来れば鉄系の定規を当て、同じ個所を何回も切りまくります。
厚いので裏からもやった後、机の角とかで一気に割る感じです。
アルミ枠を挟む時にゴムでかなりタイトに巻くので、角を丸くヤスっておいた方が輪ゴムが切れにくくなります。
輪ゴム
▲幅広のゴムで#20、12ミリのを買いました。
いろいろ考察してみましたが、これがちょうど良い感じとなりました。
湯口とワックスポッドとの接点
先程の画像ではシルバー原形なので、湯口部分は真鍮線、ワックスポッドとの接点部は光造形で出したやつです。
CAD原形の場合、湯口部分を付けた状態で出力した方が、
液ゴムをとる時に動かないのでイラっとくるのを防げます。
便利なセットをご用意していますのでご参考までに▼
こんにちは! クリエイターT(@Creator_Tweet)です。プロフィールはこちら アクセサリー・ジュエリーのデータ作成時の時点で湯口まで付けておく方が、後々の作業性の向上やスピードの点において有利になります。 長年の経験[…]
固定の際は
泡が枠内で動くのである程度しっかり固定する必要があります。
じゃないと脱泡中に動いたりして、えらいことになります。
アルミ枠にワックスポッドとの接点部を付ける場合は、アロンアルファで固定が良いです。
適宜アロンアルファかスプール線ワックス(湯口としては使用しない)で付けると便利です、楽天にあります。こんなの。▼
ってか、そういえば売っています
▲液ゴムの余分が出てもったいないなーってのと、いくつも色んなサイズが欲しかったので僕は作ることにしました。
なんか簡単そうだし。笑
結論としてはアルミ枠が結構大変なので、めんどいから買っちゃえ!っていうのもありだと思います。
お高いんですよねー。
枠に流し込む前の脱泡→枠に流し込む等
脱泡→枠に流し込み→脱泡が全体の流れ
▲ここからは動画の方がわかりやすいかと思います。
追記:真空ゲージのメーターが振り切った状態(−0.1以上)で脱泡していきます。途中でメーターが上がらない場合はスキマがどこかにあります!
とにかくアルミ枠とアクリル板の隙間を無くしたいので、輪ゴムを二重にしたり強くする場合(アクリル板が変形しない様にがベスト)もあると思います。
本当はもっと凝った枠にして、ねじで枠と板を固定した方が良いです。
けど、時間短縮でこのタイプを採用しました。
使用品
●かき混ぜる棒はなんでもオッケーです!
動画ではアルミの棒を切って、先を丸めたものを使っています。
液ゴムの量等について
先程の枠の場合
・3.5cmの枠の方は 大30g 小3g
・4cmの枠の方は 大40g 小4g
容器やら棒に持ってかれるので、上記に大5g ・小0.5gプラスで入れています。
使っている状況によってこのプラスする値は変わるので調整してみてください。
上記の動画は液ゴム1個分でやっています。
めんどいのでなるべく一度にやりたいのですが、だいたい一つのカップで合計100gまでくらいにしておくのがスムーズです。
脱泡時にすんごく膨張するので。
例えば一度に200gやりたいぞ!って場合には2カップに分ける感じです。
液ゴムをよく混ぜる
よくかき混ぜます。
残っていると、まだらに固まってないところができたりして後で大変なことになります。
気泡を気にせずガッツリ混ぜていきましょう。
けっこうドロドロしているので意外とパワーがいるかもしれません。
目安は100gの場合、一生懸命混ぜて5分くらいかかってる気がします。
予備脱泡
カップは完全に下から空気が入らないので、気持ちよく脱泡することができます。
やればやっただけ抜けるのですが、
だいたい均一な細かい泡だけになった所で次の段階に進んでオーケーです。
1. 最初は泡がたくさん入っているので、すぐにグォって盛り上がってきます。
なので大気解放してシュンとさせます。
とにかくこぼさないように、1ターン目は良く見ていた方が良いです。
ジュエリー原型-液体シリコンで型どり①の追記にあった、側面のバルブが便利です。
ゆっくり解放した方がより泡が抜ける感じがします。
2. その後、1回5~10分くらいの脱泡を2回、だいたい消えたなーぐらいで次の段階に行きます。
できれば結構、細かい泡になっていた方が有利です。
デシケーター内の気圧を下げて泡の中にある空気の方の気圧を優位にする、そして浮力で上に抜くイメージです。
なるべく、泡が大きくなる時に隣の泡とくっついてもらった方が早く上に抜けます。
液が粘質でゆっくり泡が動くところがあるので、ゆっくりな動作を意識した方が良いと思います。
枠に流し込む
焼きゴムの場合は必須なのですが、枠に引っ付かないように石鹸水を塗って乾かしておくとスポっととれやすいです。
液ゴムは必須な感じがないのですが、
アクリル板はひっつきやすいので最初の一回目は塗っておいた方が良いかもしれません。
枠の擦り合わせがあまいとアルミ枠とアクリルの間から次々と泡が入ってきます。
けど結論として、やってる最中になんやかんや入ってきます。泣
ずっとやっていると無限ループになるので、だいたい一つの泡が1.5mmくらいだったら固まる時に勝手に消えます。
完璧に泡を消すのは、時間がかかり厳しいという事がわかりました。
大きい泡の塊や、それが原型にかかってるとまずいですが、
ある程度細かい泡だったら勝手に消えます。不思議です。
動画では結構きれいに泡が無くなってますが、動画ほどじゃなくても大丈夫です。
硬化過程
常圧に戻して硬化させます。
真空状態の方が良さそうだなと思ってたのですが、原因不明の泡がいつの間にか入ってるので、常圧が良いと思います。
完成!
スポっととる瞬間が最高です!
もうこの工程だけやっていたい!!けど、このあとにゴム切りが待っています。笑
液ゴムとったあと四方に余分なゴムが出来て除去するわけなんですが、その際にはY字の甘皮切り(下の画像では右の方)が便利です。
これも楽しいのですがツーっと切っていって、すごくきれいな角となります▼
▲ジュエリー職人は結構指先をやられるので、このお手入れセットが一石二鳥です。
けっこう熱中して無心で甘皮を切ってる時があります。笑
カップを使い回すか問題
液ゴムを多めにして容器に少し残し、剥がしやすくして容器を使い回すか。
しっかり規定分量にして、ヘラでとり(薄く残ると剥がすのがめんどい)容器を捨てるかについて問題です。
●結論
計算しまくった結果、
液ゴムが高いので、容器を捨てるほうがコストパフォーマンスが高いです。
古い液ゴムが混入する分には全然問題なく、逆にかさ増しで古いものを入れるなんてやり方もあります。
けど、ジュエリーの細かいディテールの所に古いのが引っかかったりすると、脱泡の時に不具合が出る可能性があるので避けた方が良いと思います。
ゴム切り・ワックス取り等について
ゴム切りってすごい頭使うので、専門でやられている方はもっと社会的に評価されるべきだと思います!
スーパープロにお願いすると、こんなオシャレな切り方があるのか!って惚れ惚れします。
ゴム切りは独立した専門職レベルの奥が深い技術なのですが、
有志の方々がYouTubeやらホームページで開示してくれてます。
[ゴム切り やり方 原型]
[ジュエリー インジェクションワックス]
みたいな感じでググると出てきます、動画がオススメです。
平たく言うと切れちゃえば、ワックスは取れます。
ただ、うまく綺麗にワックスをとるにはパーツ分けしたり、空気の逃げ道を作ってあげたりします。
ゴム切りに便利なメスについての記事はこちら、No.11のメス刃を基準にすると良いです▼
出展:feather T こんにちは! ジュエリー職人のT(@Creator_Tweet)です!プロフィールはこちら 通常の文房具のカッターも使いますがジュエリー・アクセサリー作りにおいて、いろいろなタイプのメス(ナイフ)を使い[…]
最初はシンプルな物とかは自分で切って経費を浮かし、難しいのはスーパープロの外注さんに切ってもらうのが良いと思います。
そうすることにより、
こうやって切るのかと学び、自育してくのが良いかなって思います!
僕は会社員時代、仕事終わりに違う部署を色々回って教わってました。笑
ゴム型の管理
品番を書く時
ゴム型を管理するのにマジックで直接書いていくのが便利だと思います。
焼きゴムの場合は、ティッシュを1枚はがしたのを(通常、薄いのが2枚になってる)のっけて焼くと普通のマジックでも乗るのですが、液ゴムはそうもいきません。
なので普通のマジックだとはじいちゃうのですが、こういう便利なのがあります▼
T こんにちは! クリエイターT(@Creator_Tweet)です。プロフィールはこちら 「ゴム製品などに油性ペン書こうと思ってもはじいてしまうな」「なんの素材ににも書けるぺんはないかな?」 といった方に向けてお伝えしていきます[…]
もしくはアクリル板の方をホーニングかけておいたら、
普通のでもうまく書けるようになるのでは⁉と思っていますが、まだ試していません。笑
ゴム型を入れる容器
▲https://www.monotaro.com/p/3712/9111/
いろいろ試したのですが、僕はこういうのに入れて管理しています。
普通に本棚みたいなのに入れていくのもありですよ!
管理としてはなるべく温度変化のない、綺麗めな場所に置いておいた方が良いです。
ゴム型はたくさん使用すると劣化するし、経年劣化もします。
液ゴムは焼きゴムより劣化しやすいニュアンスがあります。
さいごに
いかがだったでしょうか?
こちらは①の記事▼
こんにちは! ジュエリー職人のクリエイターT(@Creator_Tweet)です。プロフィールはこちら 光造形の出力品は焼きゴムができない(加圧の問題)ので液ゴムが重要になってきました。 真空脱泡器と容器(デシケーター)の作り[…]
何と言いますか、ゴム型大変ですよね。笑
僕は大量に試作をする必要があったので、自分でやらないと資金的に厳しいってのがありました。
微妙にハードルが高いので、
資金的に余裕のある方は、外注さんにお願いするのも全然ありだと思います。
0から始めるよりか良いかなって思って書いてみました🐒
それではご参考になったら嬉しいです!