ジュエリー職人のクリエイターT(@Creator_Tweet)です。プロフィールはこちら
「リング(指輪)を作りたいけど、どういった寸法で作ったら良いかな?」
「今のトレンドやどんなことを考えて作れば良いかな?」
といった方に向けてお伝えしていきます。
幅はデザインのカジュアル度で変わってくるのですが、厚みは強度や指なじみなど重要な部分に関わってきます。
リングの設計をする時に役立つような現場の実際や機微をまとめてみました。
CADや手作りの際にお役立てください。
本記事の内容
●ジュエリー製作の場合、このくらいの厚みがオススメ
●幅について
●トレンドの変化
●横から見た外形のアール(半弧)について
それでは順を追って説明していきます。
リングの各部分、名称について
中石があったり、センターがデザインされているリングのケース
▲例えばこういったタイプのリング。
人の体のパーツになぞらえて呼びます。
▲業界の通例として上記の様な感じ。
あれ、下半身はどこいったんだろう!って感じですね。笑
ダイヤ部分を頭って呼ぶかは賛否がありますが、パールリングの場合は頭って呼ぶことが何故かあります。例)頭が回っちゃう。
すごく頻度が高いのに、一番下の部分の呼称がないので「下の部分の厚み」「下の部分の幅」と言ったりします。
こういった呼び方を覚えておくと、打ち合わせの時や業界人と話す時に便利です。
この呼び方を元に解説してきます。
全周均一な厚みのタイプ
特に場所を指定しての呼び方はありません。
リングの厚みについて
概要
●一般的なジュエリー(プラチナ・ゴールド・ホワイトゴールド)に適用できると思います
●デザイン的にフォーマル寄りで、基準な感じ
●実際、このような感じでたくさん作ってきました
シルバーの場合は強度的に0.1~0.2mmプラスをオススメします。
下の厚み
▲一般的なジュエリー全般で、最終上がりが1.5mmをオススメします!
万能な値だと思います。
1.3mm未満だと変形してくる可能性が高い気がします。
変形するときは下が変形しているパターンが多いです。
●変形を恐れる理由
・シンプルに製品品質として変形しちゃ嫌
・外側・内側に入っている石がとれる・割れる
・ハデに変形した場合、直したときにサイズが大きくなる場合がある(変形したタイミングで伸びる)
●普通な体系、サイズが#14の男性
Pt950ハードのリングで1.2mm厚・幅2.8mmの甲丸系の場合、1週間で変形してました。
男性の場合は、まず1.5mm以上は欲しい所です。
●関節が太いタイプの方は、嵌めた時に空間ができて(テコの原理!?)変形しやすい傾向があります
原形(液ゴム)・実物出力 | 厚みに0.1~0.2mmプラス |
平らな場合とス対策の場合 | 厚みに0.2mm~0.25mmプラス |
▲仕上げシロを考慮するとこのような感じです。
CAD原形→液ゴムの場合やワックス・キャスタブルレジンの場合は0.15mmプラスした1.65mmとなります(細かいですが)。
シルバー原形で焼きゴムの場合、本図案より103%拡大を推奨していますが、下の厚みに関しては1.65mmくらいで固定が良いと思います。
下の部分は湯口が付くケースが多いので「ス」対策、
原形の場合、ワックス時のサイズ直しが入る場合が多いので、少し厚めを視野に入れておいた方が良いです。
焼きゴムの記事についてはこちら▼
https://creator-t.com/ryousan-shukushaku/
横の厚み
▲最終上がりが1.8~2.0mmをオススメします!
2.2mm~とかになってくるとハボったい感じが出てくる気がします。
ハボったいってのは横の指に当たったときの違和感です。
けど、中石の高さが高い場合は肩の部分のアール(半弧)に合わせるため、
この限りではありません。
原形(液ゴム)・実物出力 | 厚みに0.1~0.2mmプラス |
平らな場合とス対策の場合 | 厚みに0.2mm~0.25mmプラス |
▲CAD原形→液ゴムの場合やワックス・キャスタブルレジンの場合は0.1mmプラスした1.9mmが多いです。
肩の部分等
▲肩の部分の高さは中石・中央部分・デザインによって変わってきますので、
これがオススメという数値は無く、毎回変わります。
下記に書きますが、中石の高さや中央部分の高さを決めてから決めていくことになります。
●肩の二手に分かれている部分の下、内径に接している部分の厚み
1.1mmが多いです。
収縮の大きい、焼きゴムでの原形時も1.1mmでよくやってました。
●こういったダイヤ0.3~0.5ctのリング
内径から中石のテーブル面の高さまで4.3~4.5mmにするのが良いと思います。
▼石の各部分の名前などはこちらに書いてあります
https://creator-t.com/stone-edit/
▲こういった昔のリングのリフォームの理由として、高さが高くて引っかかる・回ってしまうというのが多いです。
なので今のトレンドとしてはなるべく低く、ぺちゃんこじゃない感じが先程の4.3~4.5mm辺りという訳です。
実際デザイナーさんからの注文もこの辺の値が多いです。
その他
細いタイプ
▲こういう細いのもかわいいですね。
このタイプだと全体的に軽いので変形しにくい&変形はしょうがないって感じです。
かわいい優先ですかね!
僕はどうしても強度が気になっちゃう、なるべく壊れるものを作りたくない傾向があるので線径φ0.9~1.0で作ります。
けど、商品政策(値段)もあると思うので、攻めるならφ0.7くらいまでって感じです。
厚みが薄くても可能にしちゃう裏技
▼地金硬化処理が素晴らしいです、詳しくはこちらの記事から
こんにちは! ジュエリー職人のクリエイターT(@Creator_Tweet)です。プロフィールはこちら 「ジュエリー製作をしているんだけど、プラチナやゴールド、シルバーの地金を硬くする地金硬化処理をしてくれる会社はないかな?[…]
リングの内側に石を入れる場合
ブライダルリングなどのシーンで良くあります。
注意点として
色石はごろってるなど個体差が激しい・サイズ直し時に割れる・熱がダメの場合が多いからです。
でもなんか石を入れたいぞ!って場合は、
ダイヤ・カラーダイヤ系はアリ、コランダム系(ルビー・ブルーサファイアみたいな)だったらギリって感じになります。
●テーブル面がつらいち以下になっていた方が良い(サイズ直しの時に割れる)
●キューレットから表面部分までの厚みは、最低0.5mmは欲しいところ
●例えば1/100のダイヤを入れる場合、数字的に見ると厚みが1.3mmあれば大丈夫だけど、実際は最低1.5mmは欲しい所。
予備をみてデザイン的に厚みを持たせる箇所を作れるなら1.7mmくらいが良いと思います。
幅について
▲参考までに、上記のリングは中石のダイヤが0.3ct(φ4.3mm)でリング幅が2.8mmです。
●幅があるものの方がカジュアル寄りな印象になると思います
●幅はデザインの方向性によって変わってくるのでコレっていう数値は特にありません、
幅が出るほど強度は増します。
シルバーのリングにて、
リングの下の厚みが1.0mmくらいでも幅がある場合は強度的に成立します。
トレンドの変化
リングの指なじみ部について
▲現在は内甲丸が主流となっています。
もっと指なじみ部を甲丸にして平らな面がほとんどない、甲丸!ってパターンもありますが、
・サイズが安定しない(ちょっと磨きすぎたり、叩いた時大きくなる)
・平な所がある方が刻印で有利
・大差ないですが、点ではなく面で接する為ホールド感が増す
といった理由で丸めすぎない方が良いかなって思います。
上記の写真よりもうちょい丸めた方が良いかもですが、実際としてこんな感じです。
甲丸!ってパターンは、付ける瞬間はなめらかですごく良いんですけどね。
断面図
▲このような種類がメインだと思います。
甲丸と平甲丸の境目の定義は曖昧で、平らっぽい甲丸が平甲丸という感じです。
CADをやる場合は上記の断面図を参考にしてみてください。
▲平打ちはまっ平らでもよいのですが、
最終的な寸法を切らない様に少しふくらましておくのもありです。
そうすると、
・仕上げ時のス対策、平は特に大変だから
・最終的な想定寸法をきらない為に
・焼きゴムの原型の場合必ず”ひけ”(平らな面はへこむ)があるからその対策
といったときに便利です、お好みでこういった形状を意識するのも良いです。
余談ですが、側面がまっ平らなリングもこの考え方は有効です。
仕上げの部分の話になりますが、まっ平らよりも0.1~0.2mmくらい外落ちの方が高級感がでます。
なので、
▲バッキンバッキンに角が出てる、カルティエのラブリングはあまり良くない例です。笑
職人目線では腕の見せどころなので角は出したいんですけどね。
角が出てると痛いけど、一周回って良いのかも⁉︎
よく新品仕上げの修理をしていますがバッキンバッキンめに仕上げています。
横から見たリングのアールについて
ココのアールはどうやって導き出すの?
▲こういったリングのココの部分の件です。
結構、目検討な感覚が必要になってくる部分でもあります。
ざっくり言うと下半分は真円をずらした感じでうまくいくことが多く、上半分は楕円を適用する場合が多いです。
まず下半分について
▲内径は指定したサイズの真円です、この場合は#9。
そこから希望の下の厚み分ずらし、横の希望の厚みにだいたいピッタリいけば良い感じ。
上記は内径より大きい真円でうまくいった例です。
うまくいかない場合もあると思います、CADだったら変形させて横の厚みに合わせる感じになると思います。
上半分
中石部分の高さに合わせて線を引く感じになりますが、
楕円経由で調整するとうまくいく場合が多いです。
楕円定規のままうまくいけば良いのですが、感じを見て二枚目の画像みたいに調整することもあります。
曲線の綺麗さを意識
CADの場合はないと思いますが、手作りの場合は綺麗な曲線を意識して作っていくことになります。
下から薄い~厚いのグラデーションが綺麗に出るように意識する感じです。
綺麗じゃないと、
「蛇が卵飲み込んだみたいな指輪」作ってんじゃねぇって亡くなった師匠に言われてました。笑
師匠もそのまた師匠に言われてたらしいです。
予算や付き目指定・商品政策によって
ジュエリーってちょっとグラムが変わるとすぐ値段が高くなっちゃうから難しいところですね。
プロの方は想定グラムに合わして作っていくのでこれで苦労してることと思います、お察しします。笑
そういった場合は厚みや幅、裏抜きで調整していくことになると思います。
なるべく上記でご紹介した寸法を切らない感じがオススメですが、臨機応変にやってくしかありませんね。
▼このような記事もありますのでCADでやられてる方は重量の目安を出すのに便利かも
こんにちは! ジュエリー職人のクリエイターT(@Creator_Tweet)です。プロフィールはこちら 「ZBrush・ライノセラス等ジュエリーCADで体積がわかるんだけど、地金になった時の重さが知りたい」「3DCGソフトで[…]
さいごに
リングの基本的な構成を考えた時、こんなことを考えて設計してるよってのを書いてみました。
なるべく思いつく限りをぶっこみましたが、またなんかあったら追記します🐒
それではご参考になったら嬉しいです!